プレトニョフ チャイコフスキー交響曲第4番のSACD [クラシックCD]
プレトニョフ~ロシア・ナショナル管によるチャイコフスキー交響曲第4番のペンタトーンのSACDを聴きました。プレトニョフ~ロシア・ナショナル管としてはDGに次ぐ再録です。
私にとってのSACDは、SACDになった往年のアナログ名録音をCDよりもより良い音質で楽しむためのメディアという役割が大きいので、最新デジタル録音のSACDを聴くのは久しぶりの体験になります。
ペンタトーンはオランダのSACD専門メーカーで、ストコフスキーやグリュミオーなどの本家フォノグラムではCD化されていない録音をSACDにしてくれたことでお世話になったことがありました。ペンタトーンは、プレトニョフのチャイコフスキー交響曲プロジェクトのような新録音も積極的に行っているようです。これはそのシリーズ中の一枚です。
あまり聴いてこなかった最新録音のSACDですが、やはりさすがにCDよりもホールトーンを含めたオーケストラの臨場感が生々しく再生されるのに納得がいきました。プレトニョフが指揮するロシア・ナショナル管は対抗配置を取っていますが、ここでは優秀な録音によりその効果も良くわかります。ガラス細工のような透明感のある録音のキャラクターも、プレトニョフらしい分析的なオケの細部の鳴らし分けにはまさにふさわしいものです。
交響曲第4番、『ロメオとジュリエット』 プレトニョフ&ロシア・ナショナル管弦楽団(2010)
チャイコフスキーの4番のシンフォニーは、フィナーレ冒頭の第一主題で、このテーマを一段落させる3つの8分音符がシンバルと太鼓の連打で締め括られます。ここはシンバルと太鼓の音は聴き分けられるのですが、テンポが速いせいもあり、多くの録音で、その太鼓の音がティンパニなのか大太鼓なのか判然としません。
ところがたまたまこの曲のNHKのTV中継の映像を見ていたら、何とこの箇所でティンパニと大太鼓が打ち分けられている様子が音声でもわかりました。もちろん、TVでは映像の助けもあるのでしょうが、我が家のメインオーディオ用の重い低音のタンノイのスピーカーではわからなかった低音の動きが、案外TV内蔵の小さなスピーカーの軽めの低音でわかったというのは皮肉なことです。同じくNHKのTV中継でラヴェルのピアノ協奏曲が放映された際も、フィナーレ終結の和音でピアノの左手の低音に大太鼓が重なる効果がTV内蔵スピーカーではよく確認できましたが、ここもタンノイではあまりはっきり聴こえません。TV内蔵のような小口径のスピーカーでは最低域が出にくいので、その上の低音部の解像度は明瞭になるのかもしれません。
チャイコフスキーのフィナーレのティンパニと大太鼓の打ち分けはTVで見て気づき、逆に後からスコアで確認してみました。するとチャイコフスキーの書法は想像以上に手が込んでいて、3つの8分音符が1.シンバル、2.ティンパニ単独、3.ティンパニ+大太鼓という順に奏されるので、ちょっと音色旋律のような効果が聴かれます。この第一主題は楽章中で何回か繰り返されますが、もちろん同じ楽器の組み合わせで演奏されます。ただし最後のコーダでこのテーマが再現される際には、そこにトライアングルも加わり、さらに打楽器の組み合わせの重ねが厚くなっています。
さて最新録音のプレトニョフ盤ではどうかといえば、大太鼓が重ねられると、ティンパニだけでは聴こえなかった大太鼓ならではの深い低音が見事に再生されます。一つ気づいたのは、どうやらティンパニと大太鼓が区別して聴こえるかどうかという録音上の問題は、単純にその録音で大太鼓らしい音がスピーカーから再生されるか否か、という問題のようです。誠に残念なことに、我が家のヤクザなタンノイのスピーカーでは、最新録音の場合でも大太鼓の存在感が聴こえないことがままあります。チャイコフスキーはティンパニだけではなく、せっかく大太鼓を加えているわけですから、我が家のヤクザなスピーカーでも、せめてこの録音ぐらいには他の録音でも大太鼓が聴こえて欲しいものですが。
ということで、録音では及第点を付けられる演奏でしたが、演奏の方は、やはり私としてはどうしてもムラヴィンスキーと比べてしまいます。プレトニョフは速めのムラヴィンスキーよりさらに速いテンポでサラサラと進みますが、さすがにフィナーレだけはムラヴィンスキーのあの狂ったように速いテンポは取られていません。個人的にはムラヴィンスキーの凄絶な演奏の方に軍配を挙げることにやぶさかではありませんが、ただ一つ残念なのは60年録音のムラヴィンスキー盤では、当時の録音技術ではティンパニと大太鼓の区別がまだ収録できていないことです。
そもそもプレトニョフのクールで分析的な解釈自体が、濃厚なムラヴィンスキーの表現主義的演奏とは対極にあるといえるかもしれません。最新録音のプレトニョフ盤は録音も良く、ムラヴィンスキーとは対極の行き方をした演奏としてその存在価値はありそうです。
なお、併録の幻想序曲「ロメオとジュリエット」は個人的には、あまり興味の惹かれない曲なのですが、プレトニョフで聴くとチャイコフスキーのバレエ音楽がそのまま単独のオーケストラ用の序曲になったかのような面白さがあります。これはプレトニョフならではの面目躍如の演奏といってよいでしょう。
交響曲第4番、『ロメオとジュリエット』 プレトニョフ&ロシア・ナショナル管弦楽団(2010)
私にとってのSACDは、SACDになった往年のアナログ名録音をCDよりもより良い音質で楽しむためのメディアという役割が大きいので、最新デジタル録音のSACDを聴くのは久しぶりの体験になります。
ペンタトーンはオランダのSACD専門メーカーで、ストコフスキーやグリュミオーなどの本家フォノグラムではCD化されていない録音をSACDにしてくれたことでお世話になったことがありました。ペンタトーンは、プレトニョフのチャイコフスキー交響曲プロジェクトのような新録音も積極的に行っているようです。これはそのシリーズ中の一枚です。
あまり聴いてこなかった最新録音のSACDですが、やはりさすがにCDよりもホールトーンを含めたオーケストラの臨場感が生々しく再生されるのに納得がいきました。プレトニョフが指揮するロシア・ナショナル管は対抗配置を取っていますが、ここでは優秀な録音によりその効果も良くわかります。ガラス細工のような透明感のある録音のキャラクターも、プレトニョフらしい分析的なオケの細部の鳴らし分けにはまさにふさわしいものです。
交響曲第4番、『ロメオとジュリエット』 プレトニョフ&ロシア・ナショナル管弦楽団(2010)
チャイコフスキーの4番のシンフォニーは、フィナーレ冒頭の第一主題で、このテーマを一段落させる3つの8分音符がシンバルと太鼓の連打で締め括られます。ここはシンバルと太鼓の音は聴き分けられるのですが、テンポが速いせいもあり、多くの録音で、その太鼓の音がティンパニなのか大太鼓なのか判然としません。
ところがたまたまこの曲のNHKのTV中継の映像を見ていたら、何とこの箇所でティンパニと大太鼓が打ち分けられている様子が音声でもわかりました。もちろん、TVでは映像の助けもあるのでしょうが、我が家のメインオーディオ用の重い低音のタンノイのスピーカーではわからなかった低音の動きが、案外TV内蔵の小さなスピーカーの軽めの低音でわかったというのは皮肉なことです。同じくNHKのTV中継でラヴェルのピアノ協奏曲が放映された際も、フィナーレ終結の和音でピアノの左手の低音に大太鼓が重なる効果がTV内蔵スピーカーではよく確認できましたが、ここもタンノイではあまりはっきり聴こえません。TV内蔵のような小口径のスピーカーでは最低域が出にくいので、その上の低音部の解像度は明瞭になるのかもしれません。
チャイコフスキーのフィナーレのティンパニと大太鼓の打ち分けはTVで見て気づき、逆に後からスコアで確認してみました。するとチャイコフスキーの書法は想像以上に手が込んでいて、3つの8分音符が1.シンバル、2.ティンパニ単独、3.ティンパニ+大太鼓という順に奏されるので、ちょっと音色旋律のような効果が聴かれます。この第一主題は楽章中で何回か繰り返されますが、もちろん同じ楽器の組み合わせで演奏されます。ただし最後のコーダでこのテーマが再現される際には、そこにトライアングルも加わり、さらに打楽器の組み合わせの重ねが厚くなっています。
さて最新録音のプレトニョフ盤ではどうかといえば、大太鼓が重ねられると、ティンパニだけでは聴こえなかった大太鼓ならではの深い低音が見事に再生されます。一つ気づいたのは、どうやらティンパニと大太鼓が区別して聴こえるかどうかという録音上の問題は、単純にその録音で大太鼓らしい音がスピーカーから再生されるか否か、という問題のようです。誠に残念なことに、我が家のヤクザなタンノイのスピーカーでは、最新録音の場合でも大太鼓の存在感が聴こえないことがままあります。チャイコフスキーはティンパニだけではなく、せっかく大太鼓を加えているわけですから、我が家のヤクザなスピーカーでも、せめてこの録音ぐらいには他の録音でも大太鼓が聴こえて欲しいものですが。
ということで、録音では及第点を付けられる演奏でしたが、演奏の方は、やはり私としてはどうしてもムラヴィンスキーと比べてしまいます。プレトニョフは速めのムラヴィンスキーよりさらに速いテンポでサラサラと進みますが、さすがにフィナーレだけはムラヴィンスキーのあの狂ったように速いテンポは取られていません。個人的にはムラヴィンスキーの凄絶な演奏の方に軍配を挙げることにやぶさかではありませんが、ただ一つ残念なのは60年録音のムラヴィンスキー盤では、当時の録音技術ではティンパニと大太鼓の区別がまだ収録できていないことです。
そもそもプレトニョフのクールで分析的な解釈自体が、濃厚なムラヴィンスキーの表現主義的演奏とは対極にあるといえるかもしれません。最新録音のプレトニョフ盤は録音も良く、ムラヴィンスキーとは対極の行き方をした演奏としてその存在価値はありそうです。
なお、併録の幻想序曲「ロメオとジュリエット」は個人的には、あまり興味の惹かれない曲なのですが、プレトニョフで聴くとチャイコフスキーのバレエ音楽がそのまま単独のオーケストラ用の序曲になったかのような面白さがあります。これはプレトニョフならではの面目躍如の演奏といってよいでしょう。
交響曲第4番、『ロメオとジュリエット』 プレトニョフ&ロシア・ナショナル管弦楽団(2010)
2012-01-29 13:40
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