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レオンハルトのバード 鍵盤のための作品集 [クラシックCD]

先日敬愛するレオンハルトの訃報に接したばかりですが、レオンハルトが晩年にアルファに録音した「バード鍵盤のための作品集」の一枚を新たに購入して聴きました。私にとっては、この盤が本当の意味でのレオンハルトの追悼盤になりました。

英国エリザベス朝のルネサンス音楽の巨匠バードの作品は宗教的な合唱曲が代表作になるのでしょうが、その鍵盤音楽もまた独自の美しさがあります。エリザベス朝時代の鍵盤曲はどれもが、権謀作術が跋扈した当時の宮廷における複雑な人間関係の機微と哀感を反映しているかのように聴こえますが、バードの作品はことさらにその哀感が深く感じられます。

レオンハルトのバードの鍵盤作品は以前にも「ヴァージナル音楽の巨匠達」(DHM)と「エリザベス朝時代のヴァージナル音楽」(フィリップス)という二枚のCDで聴くことができましたが、これら2枚は共に廃盤のようです。これら2枚の中にはバードの作品はそれぞれ数曲ずつしか収められていなかったので、レオンハルトによるバードだけの鍵盤曲の一枚が切望されました。このアルファ盤はその待望の一枚です。


Gustav Leonhardt Plays

Gustav Leonhardt Plays

  • アーティスト: William Byrd,Gustav Leonhardt
  • 出版社/メーカー: Alpha Productions
  • 発売日: 2007/09/04
  • メディア: CD


一聴、ここでのロデヴェイク・テーヴェスモデルのチェンバロの古雅な音色に耳が釘付けになりました。このレプリカモデルは、チェンバロにポジティブオルガンを合体させたクラヴィオルガヌムとして残されていた歴史的楽器からチェンバロ部だけを独立させて作られたそうです。

この時代だけで廃れてしまったというスピネット型のヴァージナルの音は、復元楽器による録音で聴くことができますが、この録音に使われたチェンバロの少し太めのくすんだ音色は、通常のチェンバロ以上にヴァージナルに近い響きが感じられます。このくすんだ響きを、教会のアコースティックの中に捕らえたアルファの録音も見事です。

バードの作品は鍵盤曲だけでも100曲以上あり、曲を特定しにくいところがありますが、この盤の解説書に付された作品番号は、いわゆるMB(Musica Britanica)ナンバーになるのでしょうか。ここには3組のパヴァーヌとガイヤルドのペアをメインに、他にファンタジアや変奏曲、舞曲が収録されています。私にとってはほとんどが初めて聴く曲ばかりですが、どの曲もバード特有の情感が心に沁み込んでくるいい曲ばかりです。

レオンハルト独特の揺れるようなイネガル奏法によるバードの鍵盤音楽の演奏に耳を傾けていると、静かに悠久の時間が流れていくのが感じられます。それはもう他には何もいらないと思えるほどの満ち足りた気分に誘ってくれます。

Harpsichord Works: Leonhardt
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