バーンスタインのオリジナルジャケット [クラシックCD]
とんぼの本から『バーンスタイン名盤100選』が発売されました。「LPジャケット美術館Ⅱ」とサブタイトルにあるように、LPジャケットを通してバーンスタインの生涯の音楽活動の足跡をたどった一冊になっています。
NYフィルの常任指揮者時代のバーンスタインはCBSに録音活動を行っていましたが、当時のCBSのLPジャケットは本書に紹介されているように、どれもが優れたアート感覚をもったものが多く見られます。
ここでは当時のCBSへのバーンスタインの録音盤の中から、敢えて本書に紹介されていないものを3点ほどピックアップしてみました。
まず、『白鳥の湖』です。「えっ!! バーンスタインに白鳥の湖なんてあったの?」と思われて当然のほどに、この指揮者の演奏としてはほとんど評判にならなかった演奏です。LPでは第2幕がA面、第3幕がB面と、各幕の抜粋がそれぞれ片面ずつに収められていて、第1幕と第4幕はバッサリと切り捨てられているというバーンスタインらしい選曲です。終幕の情景がない代わりに、第3幕からの抜粋で構成されたB面の終わりは「黒鳥のパ・ドゥ・ドゥー」が選ばれていて、この曲で全曲が締めくくられています。バーンスタインのエキサイティングな指揮ともども、この選曲はたいへん効果的です。
このジャケットのモデルはニューヨークシティバレエ団のヴァイオレット・ヴァーディ、写真はドン・ハンスタインというクレジットが記載されています。よくあるバレリーナをクローズアップした写真ですが、青と白のみの配色ともども、あっと驚くほどに無駄がなく効果的なジャケットに仕上がっています。フォトグラファーの写真も優れていますが、クレジットには名前の記載のない、このジャケットのアートディレクターのセンスの高さにも脱帽です。これは私が所有しているLPジャケットの中でも白眉のデザインの一枚です。
お次は『ピーターと狼』で、ナレーションは指揮者自身が受け持っています。オリジナルのカップリングは『くるみ割り人形』組曲でした。
こちらのフォトグラファーの名前はヘンリー・パーカーとクレジットされています。我々が想像するよりもはるかに幼く可愛らしいピーターです。
さて、もう一枚は『ロッシーニ序曲集』です。これまた、ほとんど評判にならなかった一枚ですが、敬愛する評論家の宇野功芳氏が高く評価されているように、バーンスタインのロッシーニは超重量級のエンターテイメントに仕上がっています。セミラーミデ序曲が特に凄い!!
ジャケットはミラノのスカラ座で指揮するバーンスタインの写真が選ばれていますが、フォトグラファーは『白鳥の湖』と同じドン・ハンスタインの名前がクレジットされています。
ここにご紹介したジャケットは残念ながらいずれもリマスターされたCDでは採用されていません。『白鳥の湖』には『くるみ割り人形』組曲がフィルアップされていますが、何と「黒鳥のパ・ド・ドゥー」がチャイコフスキーのオリジナルに従って一幕に戻されてしまい、全曲の冒頭に入っています(何という勘違い!?)。原典版では第一幕にあったパ・ド・ドゥーの一部を改変して第三幕の黒鳥のパ・ド・ドゥーに転用したという改訂版のアイデアは、確かにチャイコフスキー自身はあずかり知らないことなのかもしれませんが、そのために我々は黒鳥のパ・ド・ドゥーという素晴らしいクライマックスが聴けることになったのです。バーンスタインもその改訂版に従った選曲を行っているわけですから、指揮者の意図を無視したこの編集は信じがたいところです。CDプレーヤーで曲順を指定し直して聴くしかありません。
Tchaikovsky: The Nutracker Suite; Swan Lake
『ピーターと狼』は『動物の謝肉祭』と『青少年の管弦楽入門』を組み合わせた徳用盤で出ています。
プロコフィエフ:ピーターと狼
ロッシーニ序曲集はスッペの序曲集とフィルアップされ、これまた別のジャケットで出ています。
Rossini, Suppé: Overtures
上にご紹介したのはオリジナルジャケットではありませんが、CBS時代のバーンスタインのオリジナルジャケットを紙ジャケット仕様で再現したCDのボックスセットが出ています。10枚のセットで、50年代後半から60年代にかけての初期のステレオアナログ録音中心に選ばれています。この10枚がどういう基準で選ばれたのかは不明ですが、とんぼの本の『バーンスタイン名盤100選』で選ばれている盤の多くがこのセットに採用されています。これらの中には作曲者自身が絶賛したというショスタコーヴィチの第5交響曲の旧録音、3回行われたうちの最も古い録音によるストラヴィンスキーの『春の祭典』などが含まれています。
The Original Jacket Collection: Leonard Bernstein
これら10枚中のジャケットデザインでは『春の祭典』とハイドンの交響曲『熊』、『雌鳥』が印象的です。イラストのクレジットは春の祭典がグレイ・フォイ、ハイドンの交響曲はヘンリエッタ・コンダックの名前が記されています。
バーンスタイン名盤100選―LPジャケット美術館2 (とんぼの本)
- 作者: 佐渡 裕
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/09
- メディア: 単行本
NYフィルの常任指揮者時代のバーンスタインはCBSに録音活動を行っていましたが、当時のCBSのLPジャケットは本書に紹介されているように、どれもが優れたアート感覚をもったものが多く見られます。
ここでは当時のCBSへのバーンスタインの録音盤の中から、敢えて本書に紹介されていないものを3点ほどピックアップしてみました。
まず、『白鳥の湖』です。「えっ!! バーンスタインに白鳥の湖なんてあったの?」と思われて当然のほどに、この指揮者の演奏としてはほとんど評判にならなかった演奏です。LPでは第2幕がA面、第3幕がB面と、各幕の抜粋がそれぞれ片面ずつに収められていて、第1幕と第4幕はバッサリと切り捨てられているというバーンスタインらしい選曲です。終幕の情景がない代わりに、第3幕からの抜粋で構成されたB面の終わりは「黒鳥のパ・ドゥ・ドゥー」が選ばれていて、この曲で全曲が締めくくられています。バーンスタインのエキサイティングな指揮ともども、この選曲はたいへん効果的です。
このジャケットのモデルはニューヨークシティバレエ団のヴァイオレット・ヴァーディ、写真はドン・ハンスタインというクレジットが記載されています。よくあるバレリーナをクローズアップした写真ですが、青と白のみの配色ともども、あっと驚くほどに無駄がなく効果的なジャケットに仕上がっています。フォトグラファーの写真も優れていますが、クレジットには名前の記載のない、このジャケットのアートディレクターのセンスの高さにも脱帽です。これは私が所有しているLPジャケットの中でも白眉のデザインの一枚です。
お次は『ピーターと狼』で、ナレーションは指揮者自身が受け持っています。オリジナルのカップリングは『くるみ割り人形』組曲でした。
こちらのフォトグラファーの名前はヘンリー・パーカーとクレジットされています。我々が想像するよりもはるかに幼く可愛らしいピーターです。
さて、もう一枚は『ロッシーニ序曲集』です。これまた、ほとんど評判にならなかった一枚ですが、敬愛する評論家の宇野功芳氏が高く評価されているように、バーンスタインのロッシーニは超重量級のエンターテイメントに仕上がっています。セミラーミデ序曲が特に凄い!!
ジャケットはミラノのスカラ座で指揮するバーンスタインの写真が選ばれていますが、フォトグラファーは『白鳥の湖』と同じドン・ハンスタインの名前がクレジットされています。
ここにご紹介したジャケットは残念ながらいずれもリマスターされたCDでは採用されていません。『白鳥の湖』には『くるみ割り人形』組曲がフィルアップされていますが、何と「黒鳥のパ・ド・ドゥー」がチャイコフスキーのオリジナルに従って一幕に戻されてしまい、全曲の冒頭に入っています(何という勘違い!?)。原典版では第一幕にあったパ・ド・ドゥーの一部を改変して第三幕の黒鳥のパ・ド・ドゥーに転用したという改訂版のアイデアは、確かにチャイコフスキー自身はあずかり知らないことなのかもしれませんが、そのために我々は黒鳥のパ・ド・ドゥーという素晴らしいクライマックスが聴けることになったのです。バーンスタインもその改訂版に従った選曲を行っているわけですから、指揮者の意図を無視したこの編集は信じがたいところです。CDプレーヤーで曲順を指定し直して聴くしかありません。
Tchaikovsky: The Nutracker Suite; Swan Lake
- アーティスト: Pyotr Il'yich Tchaikovsky,Leonard Bernstein,William Vacchiano,New York Philharmonic
- 出版社/メーカー: Sony
- 発売日: 1998/11/24
- メディア: CD
『ピーターと狼』は『動物の謝肉祭』と『青少年の管弦楽入門』を組み合わせた徳用盤で出ています。
プロコフィエフ:ピーターと狼
- アーティスト: ニューヨーク・フィルハーモニック,バーンスタイン(レナード),プロコフィエフ,サン=サーンス,ブリテン
- 出版社/メーカー: ソニーレコード
- 発売日: 1996/10/21
- メディア: CD
ロッシーニ序曲集はスッペの序曲集とフィルアップされ、これまた別のジャケットで出ています。
Rossini, Suppé: Overtures
- アーティスト: Carl Stern,Gioachino Rossini,Franz von Suppe,Leonard Bernstein,Engelbert Brenner,John Wummer,Harold Gromberg,New York Philharmonic
- 出版社/メーカー: Sony
- 発売日: 1993/06/22
- メディア: CD
上にご紹介したのはオリジナルジャケットではありませんが、CBS時代のバーンスタインのオリジナルジャケットを紙ジャケット仕様で再現したCDのボックスセットが出ています。10枚のセットで、50年代後半から60年代にかけての初期のステレオアナログ録音中心に選ばれています。この10枚がどういう基準で選ばれたのかは不明ですが、とんぼの本の『バーンスタイン名盤100選』で選ばれている盤の多くがこのセットに採用されています。これらの中には作曲者自身が絶賛したというショスタコーヴィチの第5交響曲の旧録音、3回行われたうちの最も古い録音によるストラヴィンスキーの『春の祭典』などが含まれています。
The Original Jacket Collection: Leonard Bernstein
- アーティスト: Ludwig van Beethoven,Leonard Bernstein,Aaron Copland,George Gershwin,Franz Joseph Haydn,Charles Ives,Gustav Mahler,Dmitry Shostakovich,Jean Sibelius,Igor Stravinsky,Leonard Bernstein,Raymond Sabinsky,Columbia Symphony Orchestra,New York Philharmonic
- 出版社/メーカー: Sony
- 発売日: 2001/12/04
- メディア: CD
これら10枚中のジャケットデザインでは『春の祭典』とハイドンの交響曲『熊』、『雌鳥』が印象的です。イラストのクレジットは春の祭典がグレイ・フォイ、ハイドンの交響曲はヘンリエッタ・コンダックの名前が記されています。
私のつたないブログにコメント有難うございました。沢山CDやコンサートなど聴かれておられる様で、これからも拝読させて頂きます。
タンノイは何を使われておられますか。私なんぞは中古のもらい物をこれから自分で修理しますので、まだ、正確にはタンノイユーザではありません。
(^^;
by たこやきおやじ (2008-10-14 10:23)
>たこやきおやじさん、コメントありがとうございます。
私のタンノイは以前はユニットが38センチ口径のバークレイでしたが、よりバランスが良いのではとの判断から25センチ口径のスターリングに替えました。
結果はスピーカー自身ではなく、部屋のアコースティックの問題の方が大きいことに気づきました。
現在はあきらめて(?)、スターリングで楽しんでいます。
by mickey (2008-10-18 19:53)
こんにちは。
WEB美術館のSummyです。
レコードジャケットへのこだわり、大変うれしく思います。
実は僕もレコードが大好きで、WEB美術館では「LPジャケットギャラリー」という展示室を設けています。
実は今日、バーンスタインの「ピーターと狼」と「動物の謝肉祭」のLPをゲットしました。
国内版でイラストは飯野和好氏。
こちらは「らくがき帳」で紹介しています。
by Summy (2008-11-14 21:44)
>Summyさん、ご訪問ありがとうございます。
WEB美術館、拝見させていただきました。
飯野和好氏イラストの「ピーターと狼」のLPジャケットも素敵ですね。
バーンスタイン~ロンドン響の「春の祭典」のR・ヘスのイラストのジャケットも拝見しました。
実はこのLP、知人に貸したまま返って来ず、行方不明のままです。残念!!
by mickey (2008-11-14 23:03)