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ファジル・サイのリサイタル第2夜 [クラシック演奏会]

ファジル・サイのピアノリサイタルを先々週に続いて、早くも2夜目を聴きに行きました。一度の来日時に2回続けて通ったアーチストはサイが初めてです。

say.jpg前回のプログラムの目玉は『展覧会の絵』でしたが、今回のプログラムは前半がバッハ、後半がラヴェルとプロコフィエフのソナタを中心に据えた意欲的なものです。

前半のバッハはブゾーニ編のシャコンヌ、自身の編曲の大フーガ(幻想曲とフーガ ト短調)、フランス組曲第6番、さらにパッサカリアが続くという超ヘビーなプログラム。パッサカリアは当日、急遽ヤナーチェクのピアノソナタ『1905年10月1日』という、これまた決して軽いとはいえない曲に替えられました。

バッハのシャコンヌはこれで生で聴くのも3回目、大フーガも今回の来日ですでに聴いていました。共にバッハの他の楽器のための作品が、ピアノという別のキーボード用に完璧に変換された演奏。フランス組曲もこれでサイの生で聴くのも2回目ですが、チェンバロからピアノへと見事に復元し直されているので、まるでバッハの管弦楽組曲のピアノ編曲を聴いているかのよう。

急遽差し替えられたヤナーチェクのピアノソナタは初めて聴く曲。サイが取り上げたのが納得できる、剛毅なピアニズムで覆い尽くされた2楽章の厳しいソナタ。

後半はスカルラッティのソナタ3曲から始まりました。サイのスカルラッティは是非聴いてみたかったので、思いのほか願いが早く実現されました。結果はチェンバロでは決して表現できないピアノならではのキーボード音楽に見事に変換された、予想通りの理想的なスカルラッティ。ふとホロヴィッツのスカルラッティを思い出させられました。

続いてラヴェルのソナチネ。サイのラヴェルもこれが初めてですが、この古典的な曲をサイが弾くと、曲のシンプルな構造がさらにむき出しになるのではと思っていました。ところが、ラヴェルもサイ流に見事にラヴェリッシュなピアノの音への変換が試みられていました。結果、曲の古典性よりもむしろラヴェルの音色へのこだわりを強く印象づけられる演奏になっていました。古典的な外観は巧緻な書法を覆い隠すためのカモフラージュでしかないことがサイの演奏からはよくわかりました。

プログラムの最後はお目当てのプロコフィエフの第7ソナタ。ピアノの打楽器的な側面を極限まで追求したこのソナタがサイに向かないわけはありません。サイとしても是非弾いてみたかった曲だったのでしょう。満を持しての登場です。

1楽章の2つのテーマ間の静と動、明と暗の強いコントラスト、2楽章の遠く近くに鳴り響く鐘の音の遠近感、3楽章プレチピタートの人間業を超えたかとも思われるピアノを壊さんばかりのもの凄い打鍵。しかもラヴェルがラヴェルであったように、プロコフィエフでもそこかしこにプロコフィエフ特有の匂いが感じられ、はっとさせられます。予想を遙かに超え、この曲をサイがここまで面白く聴かせてくれるとは。

実はサイのリサイタルは先に聴いたばかりなので、この2回目に足を運ぶことに若干躊躇がありました。けれどもここまで良い方向に予想を覆されれば、やはり来てよかってという大きな満足感が残りました。これだから、サイからは目が離せない!!

アンコールは、何と今回の来日の新レパートリーの『展覧会の絵』の最後の3曲。プロコフィエフのソナタの2楽章から続いて、鐘の音を響かせる曲が奇しくも並ぶことになりました。前回サイの「展覧会」を聴いた時は、正直なところラヴェルのオーケストラ版の焼き直しみたいに聴こえましたが(確かにサイの演奏ではそういう一面もあるのですが)、こうしてプロコフィエフの後にムソルグスキーを聴かされるとロシアンピアニズムの系譜が、ムソルグスキーからプロコフィエフへと継承されていることに気づかされました。ムソルグスキーの原曲も、一つの独立した立派なピアノ曲だったことがわかりました。そう言えばスカルラッティもそうですが、ムソルグスキー、プロコフィエフも共に、あのホロヴィッツが取り上げていた曲です。

この日のサイのアンコールは、さらにお馴染みのいつもアンコールで披露されるプリペアードを取り入れた自作、そして何とベートーヴェンのテンペストソナタのフィナーレの3楽章と続き、夜の7時に始まったコンサートは10時近くにまでに及びました。

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