アンセルメのファリャ三角帽子のSACD

アンセルメのファリャ「三角帽子」のSACDを聴きました。カーゾンのモーツァルト、ピアノ協奏曲のSACDと一緒に購入したもので、共に同じ英デッカ原盤でオーディオメーカーのエソテリックがSACDに起こしたものです。

この録音は1961年という初期のステレオ録音ながら、当初から名録音との評価の高い録音でした。かなりHi-Fiを意識したキラびやかなサウンドが特徴ですが、SACDではより自然な響きになりました。舞台裏で歌われるメゾの独唱がここではデビュー当時のベルガンサに受け持たれていますが、SACDではベルガンサの歌唱が冴え冴えと響き渡るようになって、これが同じ録音かとびっくりさせられます。

このジャケットのイラストはそのタッチから推すと、もしかしたらベルナール・ビュッフェではないでしょうか。このファリャはCD時代に入ってから初めて聴いたもので、LPでは所有していなかったせいか、当初気づきませんでした。残念ながら再発CDにはジャケットのイラストレーターの名前は記載されていません。同じ英デッカ盤でレズニックのカルメンのジャケットは、イラストによるカルメンの肖像画でしたが、このイラストは確かビュッフェだったはずです。このイラストの件に関して、識者のご意見をいただければ幸いです。

それにしてもステレオLP時代のアンセルメ～スイス・ロマンド管弦楽団の英デッカ録音はどれも素敵でした。当時の英デッカによるアンセルメ～スイス・ロマンドの録音は、生のオーケストラをプラモデルで一旦作り変えたかのような独特な人工的な感触を持っていました。その人工的なHi-Fiサウンドが怜悧に設計されたアンセルメの音楽作りと相俟って、他では代え難い独特なアンセルメ・マジックの世界に聴く者を誘ってくれました。幸いにも、そのアンセルメ・マジックのサウンドはCD化されても健在です。

英デッカではCD時代に入ってから、アンセルメ～スイス・ロマンド管による色彩的なレパートリーのほとんどをデュトワ～モントリオール響で再録音しています。デュトワ～モントリオールの演奏はオーケストラの技量からいってもアンセルメ～スイス・ロマンドとは比べものにならない高い水準にあります。ところが残念ながら、その演奏からは往年のアンセルメ～スイス・ロマンドが放つオーラのマジックは聴かれません。

アンセルメの死後のスイス・ロマンド管の録音はその後常任になったアルミン・ジョルダンが指揮したエラートレーベルへの録音が少数ありますが、その数はぐっと減ってしまいました。このオーケストラの黄金時代は創設者のアンセルメの時代にピークが来ていたのかもしれません。現在でもそれをCDで聴けるということはたいへん幸せなことだと思います。

このSACDは一部の販売店でしか扱われていないようですが、一般に流通している英デッカの「レジェンド」仕様の盤も良好なリマスターで聴くことができます。こちらにはおまけとして、1955年という最初期のステレオ録音による同じアンセルメ～スイス・ロマンドによるファリャ「恋は魔術師」が併録されています。こちらも録音年代からは想像できないような鮮明なステレオ録音です。その後リリースされたSHM-CD盤はこのレジェンド盤をSHM-CD化したものでしょうか。

英デッカレーベルを擁するユニバーサル・ミュージックはSACDには消極的なので、エソテリックによる英デッカのSACDシリーズには、次にはストコフスキー～チェコフィルの「バッハ・トランスクリプション」、フィストラーリ～コンセルトヘボウの「白鳥の湖」を、是非とも望んでおきたいところです。




ファリャ：「三角帽子」「恋は魔術師」他　アンセルメ／スイス・ロマンド管弦楽団

三角帽子、恋は魔術師、他　アンセルメ＆スイス・ロマンド管弦楽団(SHM-CD)

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コメント 2

私はアンセルメ～スイスロマンドはアルルの女などのLPを持っています。確かにアンセルメ～スイスロマンドの演奏はどこか魅了するものがありますね。
by たこやきおやじ (2009-02-03 11:06) 

＞たこやきおやじさん、ご訪問ありがとうございます。
三角帽子はアンセルメの数多い録音の中でも、特別の録音なのかもしれません。後で調べたらXRCD盤も出ていることがわかりました。オリジナルのリマスター、レジェンド・リマスター、XRCD、SACD、SHM-CDとほとんど全てのCDフォーマットで出ているようです。
by mickey (2009-02-04 11:00)