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ツェートマイアーのモーツァルト [クラシックCD]

ツェートマイアーを初めて聴いたのはアーノンクールが指揮したモーツァルトの「ハフナー・セレナード」でした。ハフナー・セレナードは第2楽章から第4楽章までの3つの楽章がヴァイオリン協奏曲になっていますが、このソロヴァイオリンを担当していたのが、85年の録音当時まだデビュー直後のツェートマイアーでした。

このハフナー・セレナードの第2楽章でツェートマイアーのソロを初めて聴いたときに、その嫋々として少し線の細いきれいな歌い方に、こういうモーツァルトを弾ける人がいるのかと驚かされました。

ツェートマイアーA.jpgツェートマイアーB.jpg

これですっかりツェートマイアーのモーツァルトの虜になってしまい、その後発売された2枚のモーツァルトの協奏曲集を早速購入しました。ここではツェートマイアーは弾き振りでフィルハーモニア管と共演しています。発売当時の音楽誌のこの演奏の評価は、むしろかなり低いものでした。ツェートマイアーの弾き方は聴き方によっては未完成な演奏と見られたせいでしょうか。けれどもその因襲の手垢にまみれていない繊細な弾き方こそ、ツェートマイアーならではのフレッシュな魅力ではないかと思われます。この2枚からは予想通りのチャーミングなモーツァルトを堪能することができました。

この2枚は1番、4番と偽作の疑いのあるニ長調k.271aが写真左の1枚に、右のもう1枚には2番、3番、5番が収められているという変則的なヴァイオリン協奏曲全集になっています。現在は2枚合わせた2枚組で出ているようです。

モーツァルトを弾くヴァイオリニストというのは、必ずしも巨匠だからいいというものではなく、モーツァルトに適合する人とそうでない人に分かれるようです。今まで聴いたヴァイオリニストの中では、これぞモーツァルトというモーツァルトを聴かせてくれたのが、私見ではほとんどただ一人デュメイだけでした。もちろんだからといって他のヴァイオリニストのモーツァルトが聴けないということではありませんが、モーツァルトらしいモーツァルトを聴かせるということではデュメイにかなうヴァイオリニストは他に思い浮かびません。そして、そのデュメイにもう一人ツェートマイアーが加わりました。

ツェートマイアーのヴァイオリンの独特の歌い方は、オーストリアの民族舞曲のレントラーやヨーデルを弾くフィドルのような面影を感じさせるところがあります。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番はその第3楽章にオーストリアのシュトラスブール地方の民謡を取り入れていると言われていますが、ツェートマイアーのヴァイオリンのフィドルのような持ち味はその第3番にぴたりと適合しています。もちろん、そのフィドルのようなツェートマイアー独特の弾き方は他の協奏曲でも聴かれます。それはフランス系のデュメイには求められない独欧系のヴァイオリニストならではの持ち味と言えるでしょう。

ツェートマイアー.jpgツェートマイアーは最近ブリュッヘンが主宰する18世紀オーケストラとの共演でモーツァルトの協奏曲の全集を再録音しました。今度の全集は1番から5番までにヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲を加えた、より完璧な全集になっています。2番、3番に協奏交響曲を収めた1枚がブリュッヘンの指揮、もう1枚の1番、4番、5番を収めた盤がツェートマイアーの弾き振りになっています。

ツェートマイアーはアーノンクールが主宰するピリオドオーケストラのウィーン・コンツェントゥスムジクスに在籍していたという経歴があり、そこでピリオド奏法もマスターしたようです。ここではまた別のピリオドオーケストラである18世紀オーケストラと共演していますが、当然ツェートマイアーもピリオド奏法でつきあっています。もっとも、ここでのツェートマイアーは厳格なノンヴィヴラートではなく、適宜ヴィヴラートも交えているようです。

聴き手としてはモダンとはまた別のピリオド楽器に持ち替えたツェートマイアーが聴ける楽しみがあります。ただ、個人的にはツェートマイアーらしさは、やはりモダンでの演奏の方に強く感じられます。当然のことながら、フィドルみたいな独特のツェートマイアー節もモダンの方により顕著に聴かれます。

このグロッサ盤は録音も良く、グロッサらしいデジパック仕様の紙ジャケもきれいです。この盤のピリオド楽器の演奏を十分楽しませてもらったのですが、モーツァルトの協奏曲では未だにモダン楽器による演奏の方が耳に心地よく感じられるのは何故なのでしょうか。



ヴァイオリン協奏曲全集 ツェートマイアー(vn)フィルハーモニア管弦楽団(2CD) icon

ヴァイオリン協奏曲全集、協奏交響曲 ツェートマイヤー、キリウス、ブリュッヘン&18世紀オーケストラ(2CD) icon
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