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モダン楽器のヴィヴァルディ [クラシックCD]

ヴィヴァルディの演奏は今やピリオド楽器の方が普通になってしまいました。イ・ムジチの「四季」にドップリと浸かって育った世代としては、ノンヴィヴラートのピリオド演奏はどこか素っ気なく、モダン楽器でたっぷりとヴイヴィラートを付けて演奏したヴィヴァルディが懐かしく感じられます。

ヴィヴァルディ大全集.jpg今回購入したヴィヴァルディ大全集は、すべてモダン楽器による演奏です。大全集といってもヴィヴァルディの生前に発表された作品番号付きの曲の全てを収録した全集です。従って作品番号でまとめられていないマンドリン協奏曲や2つのトランペットの協奏曲などの有名曲は入っていません。

この作品番号付きの全集では、その大半が協奏曲になりますが、その協奏曲は全てシモーネ指揮のイ・ソリスティ・ヴェネティ(ヴェネツイア合奏団)が受け持っています。ヴィヴァルディのモダン演奏ではイ・ムジチの他、ローマ合奏団などが良く知られていますが、その中にあってシモーネ~イ・ソリスティ・ヴェネティの演奏は、指揮者シモーネの解釈が色濃く反映された一癖ある演奏が特徴と言えます。

シモーネの個性的な解釈は賛否両論に分かれるでしょうが、私はその表現意欲の新鮮さを高く評価します。イ・ムジチで聞き慣れた「四季」など、その春の出だしの眠くなるような超レガートにはビックリさせられますが、それぐらい他者とは違ってでも自分だけの個性を通すのがシモーネの特徴です。

今回久しぶりに聴いてみて、この個性的なモダン演奏というのが、ピリオドに聴き慣れた耳には意外なほど新鮮に聴こえました。初心者のヴァイオリンの練習用として有名な作品3の第6番イ短調協奏曲など、ピリオド演奏で聴くと、そのブツブツと途切れたアーティキュレーションは、まるで別の曲を聴くようです。シモーネで聴くと、聴き慣れたイ短調協奏曲の歌い方にホッとさせられます。けれどもここでもシモーネは微妙にレガートをかけるフェイントを忘れていません。

この全集では協奏曲以外のソナタのソロヴァイオリンはイ・ソリスティ・ヴェネティのコンマスのピエロ・トーゾが担当していますが、トリオソナタのセカンドヴァイオリンは今を時めくピリオド奏者のカルミニョーラがつきあっています。カルミニョーラとは意外でしたが、もちろん若き日のカルミニョーラはモダンで合わせています。

この全集はヴィヴァルディのすべての作品番号付きの作品は収めるという趣旨ですので、ジャケットにはご丁寧に作品1~12と表記されているにもかかわらず、生前のヴィヴァルディはあずかり知らなかった作品13のシェトヴィル作の「忠実な羊飼い」と、作品14として6曲まとめられたチェロソナタ集も入っています。羊飼いは懐かしいランパルのフルート、チェロソナタはトルトゥリエのスタイリッシュなチェロで聴くことができます。トルトゥリエのチェロの伴奏はヴェイロン=ラクロワのチェンバロですが、このチェンバロも全くのモダン演奏で、チェロのソロのメロディーをあちこちから引っ張ってきて演奏しています。ピリオドの通奏低音の行き方ではありませんが、これもトルトゥリエの相方としてはふさわしい伴奏と思われます。

このエラート原盤によるワーナーのヴィヴァルディ大全集はCDでも何回か再発されていると思いますが、シモーネは作品3と四季が含まれている作品8のみデジタルで再録音しています。現行盤はこの2曲のセットはこちらの新しいデジタル録音を採用しているのも親切な配慮です。それにしても、この18枚セットのヴィヴァルディ全集が7千円と少しで入手できるようになったというのは、LP時代では考えられないことです。このCDデフレ現象を歓迎しましょう。



協奏曲、ソナタ集(作品番号1~12)、他 シモーネ&イ・ソリスティ・ヴェネティ、他(18CD) icon



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