長岡京室内アンサンブル-モダン演奏の新たな段階へ [クラシックCD]
久しくめぼしい新人には出会っていなかったCDですが、久々に長岡京室内アンサンブルという魅力的な団体に出会いました。長岡京室内アンサンブルは、イ・ムジチなどの標準的な弦楽アンサンブルとほぼ同規模の13人前後の少人数の弦楽器の室内アンサンブルです。
近年はピリオド演奏が普及したため、この規模の弦楽室内アンサンブルは、ほとんどがピリオド演奏の団体になってしまいました。今時モダン楽器の新しいアンサンブルなどというのは存在意義があるのかと、長岡京室内アンサンブルも、当初はむしろ偏見の目で眺めていました。ところがチャイコフスキーの弦楽セレナードとモーツァルトのディヴェルティメントK.136~8が収録された一枚を初めて聴いてみて、これが耳から鱗の目を見張らされる新鮮な演奏で、びっくりさせられ、偏見も一新されました。
長岡京室内アンサンブルはファーストヴァイオリンの森悠子さんをリーダーとする、桐朋メソッドを基本とするアンサンブルのようですが、過剰なヴィヴラートが徹底的に抑えられているので、むしろノンヴィヴラートのピリオド奏法との親近性すら感じさせます。アーノンクールやジンマンらの指揮者ははモダンオーケストラにノンヴィヴラートのピリオド奏法を取り入れた演奏を聴かせますが、長岡京室内アンサンブルはあくまでモダン奏法の中での新たな行き方を志向しているようです。
このある種禁欲的な奏法で演奏されるアンサンブルの音楽は、他のどの団体からも聴かれなかった高度な純潔性が感じられます。耳にタコができるほど様々な演奏で聴いてきたチャイコフスキーとモーツァルトですが、このアンサンブルの演奏では初めて聴くように新鮮に聴こえます。
次に聴いた一枚は、『ブリテンとラテン』と題された一枚です。ブリテンのシンプル・シンフォニー、エルガーのセレナードという英国作品に、ヒナステラの弦楽のための協奏曲、ヴィラ=ロボスのブラジル風バッハ第9番というラテン作品が収められています。
最初に聴いたチャイコフスキーとモーツァルトで驚かされていただけに、こちらはむしろじっくりとこのアンサンブルの演奏が楽しめました。
イ・ムジチのようにたっぷりとヴィヴラートを利かせたモダン演奏の団体からノンヴィヴラートのピリオド演奏の団体へ、そして長岡京室内アンサンブルのようなヴィヴラートの抑制された新しいモダン演奏の団体へと、弦楽アンサンブルも第三世代へと新たな変貌を遂げているようです。
このアンサンブルのCDはいずれもSACD仕様で出ていますが、弦楽オーケストラのアンサンブルが見事にピュアなサウンドで再生される優秀な音質です。この盤からハイブリッド盤ではなく、CD、SACD別々のシングルレイヤー仕様での発売になったようですが、SACD盤は標準的な価格よりかなり高価なのが残念です。
この盤に収められたヴィラ=ロボスのブラジル風バッハ第9番は、弦楽オーケストラのための前奏曲とフーガの形で書かれていますが、ブラジルの民俗舞曲調の人懐っこいフーガのテーマがチャーミングな曲です。また、ヒナステラの協奏曲はバルトークをさらに先鋭にしたような作品で、やや晦渋ながら、どこか惹かれる曲です。実はこのヴィラ=ロボスとヒナステラの同じ曲を収めた別のCDを所有しています。偶然入手したもので、ニルソン~エレブロ室内管弦楽団というスウェーデンの団体による演奏です。このスウェーデン盤(Bluebell ABCD053)が、また予想外にいい演奏です。
このCDは録音も含めて、いかにも北欧らしいクールなサウンドを聴かせていて、それがラテンの火照りと絶妙にマッチしています。これは思いがけない、良い拾い物のCDに出会ったと言えそうです。このCDはアメリカとラテンアメリカの弦楽オーケストラのための作品が集められていて、指揮者のニルソン自身の編曲によるガーシュウィンのメドレーが併録されています。このガーシュウィンは弦楽アンサンブルに指揮者自らのソロピアノを加えた編成で、気の利いたBGMとして楽しめます。
Tchaikovsky / Mozart > セレナード / ディヴェルティメント K.136-138 長岡京室内.ens
『ブリテンとラテン』 長岡京室内アンサンブル(シングルレイヤーSACD)
Works By American & Latin American Composers: Nilson(Cond)
近年はピリオド演奏が普及したため、この規模の弦楽室内アンサンブルは、ほとんどがピリオド演奏の団体になってしまいました。今時モダン楽器の新しいアンサンブルなどというのは存在意義があるのかと、長岡京室内アンサンブルも、当初はむしろ偏見の目で眺めていました。ところがチャイコフスキーの弦楽セレナードとモーツァルトのディヴェルティメントK.136~8が収録された一枚を初めて聴いてみて、これが耳から鱗の目を見張らされる新鮮な演奏で、びっくりさせられ、偏見も一新されました。
長岡京室内アンサンブルはファーストヴァイオリンの森悠子さんをリーダーとする、桐朋メソッドを基本とするアンサンブルのようですが、過剰なヴィヴラートが徹底的に抑えられているので、むしろノンヴィヴラートのピリオド奏法との親近性すら感じさせます。アーノンクールやジンマンらの指揮者ははモダンオーケストラにノンヴィヴラートのピリオド奏法を取り入れた演奏を聴かせますが、長岡京室内アンサンブルはあくまでモダン奏法の中での新たな行き方を志向しているようです。
このある種禁欲的な奏法で演奏されるアンサンブルの音楽は、他のどの団体からも聴かれなかった高度な純潔性が感じられます。耳にタコができるほど様々な演奏で聴いてきたチャイコフスキーとモーツァルトですが、このアンサンブルの演奏では初めて聴くように新鮮に聴こえます。
次に聴いた一枚は、『ブリテンとラテン』と題された一枚です。ブリテンのシンプル・シンフォニー、エルガーのセレナードという英国作品に、ヒナステラの弦楽のための協奏曲、ヴィラ=ロボスのブラジル風バッハ第9番というラテン作品が収められています。
最初に聴いたチャイコフスキーとモーツァルトで驚かされていただけに、こちらはむしろじっくりとこのアンサンブルの演奏が楽しめました。
イ・ムジチのようにたっぷりとヴィヴラートを利かせたモダン演奏の団体からノンヴィヴラートのピリオド演奏の団体へ、そして長岡京室内アンサンブルのようなヴィヴラートの抑制された新しいモダン演奏の団体へと、弦楽アンサンブルも第三世代へと新たな変貌を遂げているようです。
このアンサンブルのCDはいずれもSACD仕様で出ていますが、弦楽オーケストラのアンサンブルが見事にピュアなサウンドで再生される優秀な音質です。この盤からハイブリッド盤ではなく、CD、SACD別々のシングルレイヤー仕様での発売になったようですが、SACD盤は標準的な価格よりかなり高価なのが残念です。
この盤に収められたヴィラ=ロボスのブラジル風バッハ第9番は、弦楽オーケストラのための前奏曲とフーガの形で書かれていますが、ブラジルの民俗舞曲調の人懐っこいフーガのテーマがチャーミングな曲です。また、ヒナステラの協奏曲はバルトークをさらに先鋭にしたような作品で、やや晦渋ながら、どこか惹かれる曲です。実はこのヴィラ=ロボスとヒナステラの同じ曲を収めた別のCDを所有しています。偶然入手したもので、ニルソン~エレブロ室内管弦楽団というスウェーデンの団体による演奏です。このスウェーデン盤(Bluebell ABCD053)が、また予想外にいい演奏です。
このCDは録音も含めて、いかにも北欧らしいクールなサウンドを聴かせていて、それがラテンの火照りと絶妙にマッチしています。これは思いがけない、良い拾い物のCDに出会ったと言えそうです。このCDはアメリカとラテンアメリカの弦楽オーケストラのための作品が集められていて、指揮者のニルソン自身の編曲によるガーシュウィンのメドレーが併録されています。このガーシュウィンは弦楽アンサンブルに指揮者自らのソロピアノを加えた編成で、気の利いたBGMとして楽しめます。
Tchaikovsky / Mozart > セレナード / ディヴェルティメント K.136-138 長岡京室内.ens
『ブリテンとラテン』 長岡京室内アンサンブル(シングルレイヤーSACD)
Works By American & Latin American Composers: Nilson(Cond)
タグ:長岡京室内アンサンブル
2009-08-16 14:42
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