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ディ・ステファノのナポリ民謡 [クラシックCD]

ディ・ステファノはカラスのレコーディングの相手役として知られたリリック・テノールです。カラスはオペラ歌手としては異例のしわがれ声でしたが、ディ・ステファノは正真正銘の美声でした。カラスのメゾがかった暗い声質に、ステファノの甘味なリリックテナーは不思議にマッチしていました。

ステファノはリリックテナーらしい甘味なうっとりするような美声ながら、その唱法には少し叫びが混じる(その喉を詰める唱法がまたステファノの魅力でした)ところがあって、結果それが、リリックテナーらしからぬ、ある種の強さを感じさせました。カラス同様に、後年急速に声を失っていきましたが、その喉を詰める唱法が原因だったのかもしれません。

ステファノが歌ったナポリ民謡はEMIと英デッカに残されていますが、EMI盤ではモノラルの53年とステレオの61年録音で最盛期のステファノの晴れやかな美声が聴けます。私が聴いていたEMIの国内盤は4大テナーによるナポリ民謡集という2枚組のセットでした。ステファノは単独にも他に国内盤が出ていますが、現在フランコ・コレルリのナポリ民謡が聴ける国内盤はこれだけなので、貴重です。カタリなどの有名曲はステファノとコレルリで聴き比べができるようになっています。


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カタリー(イタリア4大テノールによるナポリ民謡集)

カタリー(イタリア4大テノールによるナポリ民謡集)

  • アーティスト: ペルシコ,ディノ・オリヴィエリ管弦楽団,フランコ・フェラリス管弦楽団,コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2001/05/23
  • メディア: CD


さて、EMIへのステファノのナポリ民謡集が何とSACD化されました。今回の英EMIによるSACDはどれも優れたリマスタリングで、その音質改善効果のほどは別項の本ブログに書いています。

ステファノのナポリターナは前記4大テナー盤で音質上も十分というところがあったので、2枚の国内盤のSACDの購入はためらっていたところ、本国の英国EMIから二枚組の廉価盤でリリースされました。廉価盤といっても限定盤仕様で、豪華なアルバムに収められています。何と二枚で国内盤一枚を下回る価格、これは購入しないわけにはいきません。もちろん、対訳がないのは歌モノではマイナスでしょうが、それさえ我慢すれば、信じられないような低価格です。

国内盤の方が一足早いリリースだったので、国内盤はプレミアム価格ということで、大目に見ておくことにしましょう。ちなみに、ギーゼキングのドビュッシーの4枚のSACDは国内盤ですでに2枚購入していましたが、この機会に英国盤の4枚組セットで買い直しました。こちらも4枚で国内盤1枚を下回る価格でした。


Neapolitan Songs: Limited Signature Collection

Neapolitan Songs: Limited Signature Collection

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: EMI Classics
  • 発売日: 2012/04/09
  • メディア: CD



さてこの二枚組ですが、同じリマスタリングなので当然二枚の国内盤と同じ構成です。内容はオリジナルの二組のステレオ録音が、それぞれ1枚ずつに収められています。一枚目はトスティの歌曲(オーケストラ伴奏)を中心とした旧録音がそのまま一枚にトランスファーされているので、収録時間は40分少ししかありません。2枚目はトスティも含む様々な作曲家のナポリターナを収めたもう一組のステレオ録音が収録され、こちらには余白にモノ録音からの7曲が併録されています。カタリなどの有名なナポリターナはこのモノ録音の方に多く含まれています。

ステファノのナポリターナは、こうして通して聴くと、やはり素敵です。こういう甘美なしかも強靭なリリックテナーの美声は、他の歌手には望めません。この声でナポリターナが聴けるとは!!

もう一つあらためて気づいたのはステファノの歌唱法の意外な新しさです。この時代の歌手にしては随分とポルタメントの少ないスッキリした歌い方です(カラスの方がむしろポルタメントが多い?)。 その歌いくちにリリックテナーの美声が加わったステファノのナポリターナには独自のプレーンな魅力が感じられます。

61年のステレオと53年のモノ録音の音質の差は残念ながら、かなり明瞭に聴き分けられます。ステレオ化に後れを取ったEMIらしく、61年録音も疑似ステレオのような音場感ですが、それでも音質そのものは53年のモノより格段に進歩しています。録音とは逆に、この8年という年代差は、53年の若き日のステファノはさらに輝かしい美声を聴かせていたことがわかるのは皮肉です。

さて、SACDの出来や如何に。やはり今回のDSDリマスタリングは見事です。旧リマスターでは喉を詰めるステファノの強さの方が強調されて聴こえたのですが、新リマスタリングではリリックテナー本来の軽ろやかさが聴けるようになりました。この改善効果はハイブリッドのCD層でも確認できるのは、このシリーズの他盤同様です。

それにしても、円高にデフレが重なって旧録のCDは、ボックスセットやシリーズものなど信じられないような低価格で購入できるようになりました。ここまで低価格になると、購入意向のハードルが低くなり過ぎないかという贅沢な悩みすら抱くようになります。お蔭で、CD用の収納ラックを1ケース増やさざるを得ないはめになりました。



Neapolitan Songs: Di Stefano, Corelli, Gigli, Schipa
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ナポリ民謡&イタリア歌曲集 ジュゼッペ・ディ・ステーファノ(2SACD限定盤)
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