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ストコフスキーのキャピトル録音集 [クラシックCD]

ストコフスキーが50年代終末のステレオ初期に米キャピトルにレコーディングした録音が10枚組のセットに集成されました。

ストーキー.jpgそれにしても、円高にデフレが重なってのことと思われますが、現在の輸入盤の価格の安さには驚かされます。この10枚組で、その昔購入していた高価な輸入盤のLP盤一枚と同じくらいの価格といってもいいかもしれません。

この10枚の中には10年以上も前に購入した東芝EMI製のCDで既に所有しているものも含まれていますので、今回の最新リマスターでどれだけ音が良くなっているのかという聴き比べも注目です。

まず、1枚目に収録されたバッハ・トランスクリプション集から。さて、リマスターの結果やいかに。ウ~ム、これは微妙。確かに一皮剥けて鮮明になったのは十分わかるのですが、反面、録音の古さが明瞭になってしまいました。50年代終末の57~59年頃といえば、ステレオ録音の初期ながら、最初期の実験的な段階は過ぎ、技術的にも安定してきた頃です。現在SACD化されている同時期のRCAの3チャンネル録音などと比べてみても、当時のキャピトル録音の水準が低いのは残念です。

このバッハ・トランスクリプション集のオーケストラは他のストーキーの多くのキャピトル録音同様、レオポルド・ストコフスキー・シンフォニー・オーケストラの名称になっています。これは、モノラルLP期にRCAがストコフスキーの録音用に用意したヒズ・シンフォニー・オーケストラとは別団体のようです。縮小編成だったヒズ・シンフォニー・オーケストラとは異なり、こちらはフル編成のようです。

演奏そのものは、同じバッハ・トランスクリプション集ではステレオ時代の第二回目になるチェコフィルとのライブ、最後の三回目のロンドン響と比べて、これが特に優れているという出来ではありません。ただ、ディズニーのアニメ「ファンタジア」のトッカータとフーガで初めてストコフスキーに出会って、すっかりその魔力の虜になってしまった私にとっては、、ステレオ録音の同曲ではこの録音が最もファンタジアの面影に近い音を聴かせてくれているのがうれしいところです。

次に聴いたのはベルリンフィルとのストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」と「火の鳥」組曲で、これも東芝盤で所有していた録音ですが、これまた残念ながら期待したほどの音質改善効果は見られません。ペトルーシュカは「ペトルーシュカの死」の前で終わるコンサートヴァージョンによる抜粋版で、ちょうどピアノソロ用に編曲された「ペトルーシュカからの3楽章」がそのままオーケストラに置き換えらえたという、現在では考えられない選曲です。演奏は意外にまっとうで、火の鳥ともども、名前を伏せて聴かされたらストコフスキーとはわからない程度のケレンの少ない(残念!?)演奏です。

このキャピトル時代の録音ではストーキーらしいアクの強さが少なく聴こえるのは、強調感がなく、極めて標準的に録られている録音のせいもあるのかもしれません。

それにしても、フィラデルフィア管の常任を辞した後のアメリカ時代のストコフスキーの録音というのは、このキャピトルの後の時期も含めて、もう一つ精彩に欠けると思われるのは私だけでしょうか。ストコフスキーのステレオ録音はイギリスに戻って英デッカに録音するようになってから、再びかつてのフィラデルフィア時代の精彩を取り戻してくるように思います。英デッカによるフェイズ4というステレオ感が強調された録音も、ストーキーらしさには似合っていたせいかもしれません。

ここに収録されているその他のおもな曲には、ホルストの「惑星」やオルフの「カルミナ・ブラーナ」、そして、ストコフスキーが多くのアメリカ初演を手がけているショスタコーヴィチの交響曲から第1番と第11番などがあります。バッハ以外は以後、ほとんど再録されなかった曲ばかりです。ストコフスキーのステレオ録音は意外にもほとんどの曲が一回限りの録音で再録がないところに、この指揮者のレコーディングへの取組の一端をうかがうことができます。

と言うわけで、ストコフスキーの生涯の一時期とそのレパートリーを知る上で、この集成盤はこれはこれで貴重なドキュメントであると思われます。まだ全て聴いたわけではありませんが、それでもストーキーファンの私にとっては、ストコフスキーならではのアゴーギクや強調された細部のバランスを少しでも聴けると、何故かホッとした気持ちになります。この10枚は言わば、ストコフスキーによる魔法の玉手箱であり、その一枚、一枚から何が飛び出してくるのか予想もつかない期待を抱かせてくれます。




レオポルド・ストコフスキー キャピトル録音集(10CD) icon
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