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モーツァルトのハ短調大ミサ [クラシックCD]

モーツァルトのハ短調の大ミサはニ短調のレクイエムと並ぶモーツァルトの宗教曲中の傑作であり、共に未完であるという共通性も持っています。モーツァルトには通称「孤児院ミサ」と呼ばれる少年時代に書かれたもう一つのハ短調ミサがあるので、こちらは大ミサと呼ばれるようです。映画「アマデウス」ではレクイエムと共に、この曲の「キリエ」が使われていました。

フリッチャイ.jpgこの曲はLP時代にはフリッチャイ盤がほとんど唯一の録音だったので、フリッチャイ盤がこの曲を世に知らしめた意義は大きいものがあると言えるでしょう。もちろん、現在はCD化されていますが、改めて聴いてみても、この曲の原点としての過不足ない出来です。

この曲は合唱のほか、第一と第二の二人のソプラノとテナー、バスという四重唱のソリストが加わっていて、ソプラノ用のソロと二重唱の曲も含まれています。現在では第二ソプラノはメゾソプラノに担当される場合もあるようです。また、曲中のソロは第一と第二のどちらのソプラノが歌うのかという指示をモーツァルトは書いていないようです。

この演奏では、第一ソプラノはマリア・シュターダーが、第二ソプラノはアルトのヘルタ・テッパーが受け持っています。テッパーは重唱のみの参加で、ソプラノ・ソロ用の曲は通常第二ソプラに歌われる曲も含めて、全てシュターダーが受け持っています。シュターダーはモーツァルト歌いとして定評の高かったソプラノですが、今改めて聴いてみても、その清らかな真っ直ぐに伸びる声が魅力的です。

フリッチャイとシュターダーの共演によるモーツァルトの宗教曲では他に「エクスルターテ・ユビラーテ」と「ラウダーテ・ドミヌム」が残されていますが、現在出ているCDでは、ハイドンのテ・デウムとのカップリング盤ではない方に含まれているようです。こちらも共にシュターダーのピュアなモーツァルトが楽しめる歌唱になっています。

アーノンクール.jpg次にアーノンクールによるピリオド演奏です。テルデック時代のアーノンクールの録音は現在、この盤も含めて入手が難しくなっているものもあるようですが。

ここでは女声二人は共にソプラノに受け持たれ、「キリエ」のソロと「エト・インカルナトゥス・エスト」は第一ソプラノのラーキが、「ラウダームステ」のソロは第二ソプラノのデーネシュが受け持っています。この演奏への評価はアーノンクール好きか否かでわかれるところでしょうが、アーノンクール好きの私としては、そのオドロオドロしい(?)切り口が、この曲には特に適合しているのではないかと思います。

二人のソプラノは清らかなラーキ、少しメゾがかったデーネシュ共にチャーミングです。この曲のソプラノソロのパートは、モダン演奏ではソプラノ殺しと恐れられていますが、この演奏はピリオド演奏なのでモダン演奏に比べほぼ半音ピッチが低くなる分、二人共高声が随分と歌いやすそうです。

ゲンネンヴァイン.jpg最後はこれもLP時代に評判になったゲンネンヴァイン盤です。

このゲンネンヴァイン盤のウリは何と言ってもソプラノのマティスのソロが聴けることです。この盤では第一ソプラノがマティスで、「キリエ」と「エト・インカルナトゥス・エスト」のソロを担当し、第二ソプラノのドナートが「ラウダームステ」のソロを担当しています(アーノンクール盤と同じ割り振り)。

「エト・インカルナトゥス・エスト」はもしかしたらモーツァルトが書いた最も美しい声楽曲ではないでしょうか。このモーツァルト絶美の曲をマティスの声で聴けるということは、極めて幸せなことです。マティスの少し暗めのリリコの声ほど、この曲にふさわしい声は他には無いのではないでしょうか。神はこの曲を歌わせるために、マティスをこの世に送り出したのではないかと思われるほどです。

第二ソプラノのドナートはマティスとほぼ同時期に活躍し、もう一人のモーツァルト歌いとして高い定評を得ていた歌手です。こうして同じドイツ系のリリコのソプラノを二人同時に並べて聴いてみると、共に癖の少ない素直な発声法が意外なほどに良く似ていることに驚かされます。ドナートの方がマティスより少し明るめの声なのですが、ここでは低声の第二ソプラノの方を受け持っています。このドナートによるラウダームステも、史上、最も美しいラウダームステかもしれません。

ゲンネンヴァイン盤は現在はCDとしての入手は難しいようですが、二人のソプラノの名唱を記録するという意味においても、カタログに残される価値のある盤ではないでしょうか。





大ミサ曲 K.427、ハイドン:テ・デウム フリッチャイ&ベルリン放送響、シュターダー、テッパー、ヘフリガー、サルディ icon

モーツァルト:ミサ曲 ハ短調 K.427、他 フェレンツ・フリッチャイ/ベルリン放送交響楽団 icon

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musselwhite

こんにちは。

バーンスタインのアルバムを持って居るのですが、他の盤も聞いて見たくなりググって、此方へたどり着きました。
指揮者はアーノンクールしか知りませんが、参考にさせて頂きます。
by musselwhite (2012-11-08 10:50) 

Mickey

>musselwhiteさん、ご訪問ありがとうございます。

バーンスタインのモーツァルトのハ短調大ミサはLP時代に気になっていた一枚でしたが、CD時代に入ってからはまだ聴いていません。
第二ソプラノがメゾのフォン・シュターデのようですが、シュターデの「ラウダームステ」が聴ければ、きっと素敵な歌唱だと思われます。
by Mickey (2012-11-08 18:12) 

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