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ラトルの「くるみ割り人形」 [クラシックCD]

クリスマスといえば思い出されるのがチャイコフスキーのバレエ音楽「くるみ割り人形」です。ラトル~ベルリンフィルによるこのバレエの全曲盤の新しいCDが発売されました。まだクリスマスまでには少し間があるのですが、大好きな曲ので、さっそく聴いてみました。指揮がラトルというのも気になります。


チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」(全曲)デラックス版(DVD付)

チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」(全曲)デラックス版(DVD付)

  • アーティスト: チャイコフスキー,ラトル(サイモン),ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
  • 出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン
  • 発売日: 2010/08/04
  • メディア: CD


さて、結果は? ウーン、やはりラトルならではのポスト・ピリオド奏法を取り入れたヴィヴラートの抑制された夾雑物の混じらないピュアな表現が清新です。ウーン、と少し考え込んだのは、この曲の核心でもあり、組曲の方にも取り込まれている第二幕のディヴェルティスマンの出来が、ラトルならさらに魅力的に表現できたのではないかとの思いが残るからです。ただ、これらディヴェルティスマンの諸曲が一見何事もなくサラサラと進められてしまうのもラトルの持ち味なのかもしれません。

ラトルの行き方だと、舞曲主体の第二幕よりもシーン(情景)の割合が多い第一幕の方が断然いい出来です。第一幕のフィナーレの雪片のワルツの児童合唱には英国のボーイソプラノ合唱団のリベラが起用されていますが、その現世離れした透明な歌声がラトルの表現にピッタりで、これは思いがけないうれしいプレゼントになりました。

ラトルの既出のEMI録音では、あのウィーンフィルとのベートーヴェンの交響曲全集では、いまどき珍しい硬く痩せたデッドな音質(オケの人数が通常のベートーヴェンのシンフォニーの編成より刈り込まれているせいもあるのでしょうが)の録音に、これがウィーンフィルの音!? との思いでガッカりさせられました。この録音エンジニアはいったいどうのようなモニタースピーカーを使って、こういう音に仕上げたのでしょうか。この録音もその悪夢再びと思いきや、これはふつうにまともで良好な録音なのでホッとさせられました。この全曲盤は共に45分前後の第一幕と第二幕がそれぞれ一枚ずつのCDに余裕をもって収められています。 第一幕はセッション録音で、第二幕はライヴ収録ということですが、特にガラス細工のような質感の第一幕のセッション録音の方は、やや人工臭を感じさせるものの、いい録音です。

ラトルのくるみ割りに聴ける新しさは、現時点ではこの曲の最もアップトゥーデイトな姿を見ているような新鮮さが感じられます。かつてマイケル・ティルソン・トーマスによるこの曲の全曲盤の演奏を、当時は非常に新鮮に聴いたのを思い出しますが、その新鮮さはラトルによりあっさり更新されてしまいました。もちろん、ティルソン・トーマスにはラトルとは別の良さもあるのですが、プレトニョフやハーディングがこの曲を振ったら、ラトルとはまた別のモダンさが出るのかもしれません。ラトルもまた、その新しさはそのうちラトルの後の世代の指揮者によって更新されることになるのでしょうか。伝統的と思われているクラシック音楽の世界も、その奏法は時代とともにどんどん新しく変化していくのは面白いと思います。でも、次の時代におけるポスト・ラトルの奏法とは、いったいどういう奏法になっているのでしょうか。

個人的にはゲルギエフによるこの曲の全曲盤を気に入っているのですが、客観的に見ればゲルギエフはラトルより随分と古臭い表現といえるかもしれません。ラトルのくるみ割りからは、ベルリンフィルのモダンな音質も手伝って都会的でゴージャスなクリスマスの雰囲気が感じられます。このラトルのくるみ割りは本番のクリスマスまで何回か取り出して聴いてみることになりそうです。

国内盤ではこの曲についてのラトルへのインタビューを収録したDVDのおマケがついているようです。私はアルバム形式の装丁もきれいで豪華な輸入盤を購入してみました。この特製盤(エクスピアリアンス・エディション)にはベルリンフィルデジタルコンサートにアクセスできるキーがついているようですが、私は基本的にAVには興味がないので、まだアクセスしていません。それでも、この豪華なアルバムは所有しているだけでも満足感が持てる出来栄えです。

『くるみ割り人形』全曲 ラトル&ベルリン・フィル(2HQCD+1DVD)
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『くるみ割り人形』全曲 ラトル&ベルリン・フィル(2CD)(Experience Edition)
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コメント 2

たこやきおやじ

ご無沙汰しております。(^^;

ラトルはいいですね。とはいってもチャイコフスキーは聴いたことがありません。ベートヴェンしか聴いたことがありませんが、チャイコフスキーはちょっとピンときません。どうなんでしょう。
by たこやきおやじ (2010-11-09 16:22) 

mickey

>たこやきおやじさん、ご訪問ありがとうございます。
ラトルのチャイコフスキー? それも、くるみ割り。
記事に書いたように、その限りでは他の指揮者には見られない清新な演奏なのですが、この人の才能はむしろベートーヴェンのような古典物の方が際立つような気がします。
ラトルが本来得意とするストラヴィンスキーなどの近代~現代物も、個人的にはラトル以上に魅力的な演奏が他にあるように思われるのですが。
ストラヴィンスキーはベルリンフィルとの再録を期待しておきましょうか。
by mickey (2010-11-10 11:14) 

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