フルトヴェングラー「モーツァルト40番」のSACD [クラシックCD]
フルトヴェングラー生誕125年を記念してウィーンフィルを指揮した晩年のEMIへの録音がSACD化されています。先のブログではそのうちのベートーヴェンの交響曲を取り上げましたが、この度はモーツァルトの40番ト短調交響曲を中心に収録された一枚を聴いてみました。
フルトヴェングラーのモーツァルトの40番のシンフォニーは、今回のSACDと同時に英EMIからリリースされた「ザ・レジェンド」と題された3枚組のCDセットの中の一枚として初めて聴いたのですが、そこですっかり魅了されてしまって、より音質が良いであろう、このSACDを買い直すハメに陥ってしまいました。
まずザ・レジェンドの旧リマスターCDから聴いてみました。モーツァルトの40番はEMIへのフルトヴェングラー~ウィーンフィルのモノーラルテープ録音中でも最も初期の方に属する1949年録音なので、さすがに時代相応に粗く歪っぽい音がしています。さて、次は今回のSACDのハイブリッドのCD層へ。今回はDSDによる24bitのリマスターということです。
結果はベートーヴェンの交響曲同様、今回のDSDリマスタリングは驚くべき音質改善効果を聴かせてくれます。よくSPの復刻に際しては、針音を消し過ぎると原音の情報量までもが損失し、音が鈍(なま)ってしうと言われていますが、それは実際の聴感上でも確認できることです。このテープからのDSDによる復刻ではどういう技術が使われたのか、ハードに関しては知る由もありませんが、これだけきれいに歪とノイズが補修されていながら、逆に音質はより生々しくなるという、その見事な復刻技術には感嘆させられます。
さて次に本命のSACD層へ。DSDで蘇った音がそのまま、さらにしなやかに情報量を増します。我が家のタンノイのスピーカーでは残念ながら、ここまで蘇ったリマスター音質でもCD層ではまだ、LPに比べると硬さが残ります。それがSACDになると、LPとは異なる音質ながらも、これで十分というレベルのしなやかさを聴かせてくれます。このリマスターによるモノーラルのSACDの音質に比べれば、通常のCDにおけるモノーラルよりも新しいはずの初期ステレオ録音の再生音のレベルは遥かに劣るものであり、LPに比べても大いなる不満が残ります。
試しに同じウィーンフィルをモントゥーが指揮したステレオ最初期の英デッカによる57年録音のシューベルト、ロザムンデのCDを聴いてみました。久しぶりに聴くその音は、CDに聴くステレオ初期録音というのは、こんなにも高域の強調された硬く伸びのないツッパッた音だったのかと改めて驚かされました。これなら、モノでもフルトヴェングラーのSACDの方がいかにまともなウィーンフィルらしい音がしていることか。でもまあ、初期ステレオ録音のCD復刻レベルの多くは誠に残念ながら、こんなものです。
さてSACDに聴くフルトヴェングラーのモーツァルト40番は改めて素敵です。第一楽章第一テーマのポルタメントなど、再現部で再登場するときには、さらに大きな深いため息のようなポルタメントに変えられていて、その即興的な変化には改めて深く魅了されました。このSACDには他にもザ・レジェンドに収録されていたグルックの2曲の序曲とハイドンの驚愕が収録されていますが、共にもちろん見事な音質改善効果が見られ、演奏も一段と感銘深く聴くことができます。
さらにこのSACDで初めて聴くモーツァルト魔笛の夜の女王の2つのアリアがウィルマ・リップの歌唱で収められています。リップの歌唱はそれなりに聴かせますが、録音、演奏ともにフルトヴェングラー~ウィーンフィルの伴奏がどうのというほどのものではないので、これはオマケと考えておきましょう。
EMIには、クレンペラーなど初期ステレオ録音も是非このDSDリマスタリング方式でSACD化してもらいたいところです。
モーツァルト:交響曲第40番、ハイドン『驚愕』、他 フルトヴェングラー&ウィーン・フィル(24ビット・リマスター限定盤)
- アーティスト: フルトヴェングラー(ヴィルヘルム),ハイドン,グルック,モーツァルト,ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 2011/02/23
- メディア: CD
フルトヴェングラーのモーツァルトの40番のシンフォニーは、今回のSACDと同時に英EMIからリリースされた「ザ・レジェンド」と題された3枚組のCDセットの中の一枚として初めて聴いたのですが、そこですっかり魅了されてしまって、より音質が良いであろう、このSACDを買い直すハメに陥ってしまいました。
まずザ・レジェンドの旧リマスターCDから聴いてみました。モーツァルトの40番はEMIへのフルトヴェングラー~ウィーンフィルのモノーラルテープ録音中でも最も初期の方に属する1949年録音なので、さすがに時代相応に粗く歪っぽい音がしています。さて、次は今回のSACDのハイブリッドのCD層へ。今回はDSDによる24bitのリマスターということです。
結果はベートーヴェンの交響曲同様、今回のDSDリマスタリングは驚くべき音質改善効果を聴かせてくれます。よくSPの復刻に際しては、針音を消し過ぎると原音の情報量までもが損失し、音が鈍(なま)ってしうと言われていますが、それは実際の聴感上でも確認できることです。このテープからのDSDによる復刻ではどういう技術が使われたのか、ハードに関しては知る由もありませんが、これだけきれいに歪とノイズが補修されていながら、逆に音質はより生々しくなるという、その見事な復刻技術には感嘆させられます。
さて次に本命のSACD層へ。DSDで蘇った音がそのまま、さらにしなやかに情報量を増します。我が家のタンノイのスピーカーでは残念ながら、ここまで蘇ったリマスター音質でもCD層ではまだ、LPに比べると硬さが残ります。それがSACDになると、LPとは異なる音質ながらも、これで十分というレベルのしなやかさを聴かせてくれます。このリマスターによるモノーラルのSACDの音質に比べれば、通常のCDにおけるモノーラルよりも新しいはずの初期ステレオ録音の再生音のレベルは遥かに劣るものであり、LPに比べても大いなる不満が残ります。
試しに同じウィーンフィルをモントゥーが指揮したステレオ最初期の英デッカによる57年録音のシューベルト、ロザムンデのCDを聴いてみました。久しぶりに聴くその音は、CDに聴くステレオ初期録音というのは、こんなにも高域の強調された硬く伸びのないツッパッた音だったのかと改めて驚かされました。これなら、モノでもフルトヴェングラーのSACDの方がいかにまともなウィーンフィルらしい音がしていることか。でもまあ、初期ステレオ録音のCD復刻レベルの多くは誠に残念ながら、こんなものです。
さてSACDに聴くフルトヴェングラーのモーツァルト40番は改めて素敵です。第一楽章第一テーマのポルタメントなど、再現部で再登場するときには、さらに大きな深いため息のようなポルタメントに変えられていて、その即興的な変化には改めて深く魅了されました。このSACDには他にもザ・レジェンドに収録されていたグルックの2曲の序曲とハイドンの驚愕が収録されていますが、共にもちろん見事な音質改善効果が見られ、演奏も一段と感銘深く聴くことができます。
さらにこのSACDで初めて聴くモーツァルト魔笛の夜の女王の2つのアリアがウィルマ・リップの歌唱で収められています。リップの歌唱はそれなりに聴かせますが、録音、演奏ともにフルトヴェングラー~ウィーンフィルの伴奏がどうのというほどのものではないので、これはオマケと考えておきましょう。
EMIには、クレンペラーなど初期ステレオ録音も是非このDSDリマスタリング方式でSACD化してもらいたいところです。
モーツァルト:交響曲第40番、ハイドン『驚愕』、他 フルトヴェングラー&ウィーン・フィル(24ビット・リマスター限定盤)
2011-02-25 22:19
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恥ずかしながら私は、フルトヴェングラーの「モーツァルト」は1枚も持っておりません。でも、何か良さそうですね。(^^;
by たこやきおやじ (2011-02-28 15:36)
たこやきおやじさん、ご訪問ありがとうございます。
モーツァルト40番のCDデビューはアーノンクールとコープマンによるノンヴィヴラートのピリオド演奏だったので、ピリオド奏法とは180度異なる初めて聴くフルトヴェングラーのポルタメントたっぷりの奏法には、これがモーツァルト?と、当初は驚天動地(?_?)!!
ところが、慣れてくるとこれがまたもの凄い魅力なので、ヒストリカルのポルタメント奏法もピリオド奏法も同時に楽しめる、今という時代に感謝!(^^)!
by mickey (2011-02-28 20:05)