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アマデウス四重奏団のモーツァルト弦楽五重奏曲 [クラシックCD]

アマデウス四重奏団のモーツァルト弦楽五重奏曲全集の2枚組セットを聴きました。英国出身のアマデウス四重奏団は、ウィーンを本拠地に50年代から80年代にかけて活躍したクァルテットです。

モーツァルトは自身ではヴァイオリンよりヴィオラを弾くことを好んだと言われており、交響曲やピアノ協奏曲のオケパートではヴィオラが二部に分かれる書法も見られます。通常の弦楽四重奏に第二ヴィオラを加えた弦楽五重奏曲も、二部のヴィオラの内声部の充実や、ソロで参加することも多い第一ヴィオラのパートが弦楽四重奏曲にはない魅力を伝えてくれます。駄作はほとんど無いと言われるモーツァルトの室内楽曲ですが、全部で6曲残された弦楽五重奏曲はどれもがモーツァルト自身、特に強い思い入れを持って書かれたと思われる傑作揃いです。


モーツァルト:弦楽五重奏曲全集

モーツァルト:弦楽五重奏曲全集

  • アーティスト: アマデウス弦楽四重奏団,モーツァルト
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2010/02/24
  • メディア: CD


全6曲中ではト短調五重奏曲が特に有名です。アマデウス四重奏団がモノラル期のウェストミンスターに録音したモーツァルトのト短調の弦楽五重奏曲は、当時この曲の代表盤として知られていました。私もこの曲をこの団体の演奏で初めて知り、モーツァルトの短調曲特有の魅力とアマデウスの清新な表現に魅せられていた一人です。

ト短調五重奏曲はその後ステレオ時代に入るとブダペスト四重奏団の演奏や、さらにはデジタル時代にかけアルバンベルク四重奏団という強力なライバル盤が出現し、アマデウスによるステレオの再録もどこか影の薄い存在になってしまいました。

そして今回、アマデウス四重奏団がステレオに再録したト短調を含み全6曲残されたモーツァルトの弦楽五重奏曲全集を久しぶりに聴き直してみました。

まずト短調の再録から。今、改めて聴き直してみると、この四重奏団特有のキャラクターをリードする第一ヴァイオリンのブレイニンのポルタメントまで含んだ濃厚な表情を強く印象づけられます。この70年のステレオ再録は51年のウェストミンスターのモノラル録音の20年近く後になるのですが、試しにウェストミンスター盤を聴き直してみると、この間ブレイニンの個性が先導するアマデウスの行き方はほとんど変わっていませんでした。ただ、濃厚とはいえブレイニン節はある種の強靱な爽やかさを伴うものであり、ウェストミンスター時代にはそこにさらにフレッシュな魅力が加わっていたことがわかります。濃厚なブレイニン節はステレオ期へと進み、さらに濃厚さの度合いを深めていったようです。

では今聴き直してみると、アマデウスの演奏はもはや時代遅れの古臭いものでしかないのでしょうか。いえ、そんなことはありません。それはそれで現在のすっきりとした演奏にはには求められない、ある意味新鮮さにすら聴こえます。結果的にはこの時代性を反映した演奏が、現在の演奏からは聴かれない味わい深い個性的なモーツァルトを聴かせてくれています。ト短調以外の全ての五重奏曲にその個性は認められます。

アマデウスと同じくウィーンでモノラル時代に活躍しウェストミンスターに多くの録音を残しているアマデウスの一世代前のウィーンコンツェルトハウス四重奏団の表現は、アマデウスよりさらに濃厚なポルタメントの表情付けが特徴でしたが、それも今聴き直してみると、今の演奏には求められない新鮮さとして聴こえます。もちろん、ポルタメントを伴う表情が新鮮という意味ではなく、無意味なポルタメントは単に古臭さしか感じられません。ウィーンコンツェルトハウスやアマデウスのポルタメントは曲想の味わい深さを強める働きにつながっているということです。

演奏も時代の進化と共に変わって行く中、昔の演奏を今聴くとその味わいが逆に新鮮に聴こえることが確認できました。今の時代に昔の演奏を聴けることに感謝!!

正直なところモーツァルトの室内楽曲は現在の私の耳にはアルバンベルク四重奏団の演奏の方がしっくり馴染むのですが、それだけにアルバンベルクにはないアマデウス四重奏団の歌い口の味の濃さが時折無性に懐かしくなります。今回は久しぶりにアマデウス四重奏団を聴いてみて、懐かしさだけではなくアマデウスならではの個性に改めて魅せられました。

そこでアマデウスの個性を確認すべく、最晩年の90年の録音を聴いてみました。

アマデウス四重奏団は先にヴィオラのシドロフが亡くなったため、その追悼演奏会の90年のライヴ録音が残されています。このライヴには何とあのアルバンベルク四重奏団のメンバーが加わっていています。収録曲は、第二楽章が映画「恋人たち」で使われ有名になったブラームスの弦楽六重奏曲第一番変ロ長調とアンコールの同第二番のスケルツォが一枚のCDに収められています。アルバンベルクのメンバーは第一ヴィオラと第二チェロ、第二ヴィオラは同団体のセカンドヴァイオリンが担当しています。第一、第二ヴァイオリン、第一チェロはアマデウスなので、ここでも濃厚なブレイニン節が先導するアマデウスの行き方は変わっていませんでした。


ブラームス:弦楽六重奏曲第2番 他

ブラームス:弦楽六重奏曲第2番 他

  • アーティスト: アルバン・ベルク四重奏団,ブラームス
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルミュージック
  • 発売日: 2013/05/29
  • メディア: CD


今ではアルバンベルク四重奏団も活動を終了してしまいました。時代の流れが改めて痛感されます。



弦楽五重奏曲全集 アマデウス四重奏団、アロノヴィッツ(2CD)
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弦楽六重奏曲第2番、第1番~第2楽章 アマデウス・アンサンブル、アルバン・ベルク四重奏団員
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